#1 参加メンバー確定


集まった面々は―――。

主催者ちかを中心に、右回りに、言い出しっぺの萌歌、エースの遥&莉子の年長コンビ、さらには涼、そして美吹の6人でテーブルを囲む。

ちか「うぅ。。。」

ちかは、さきほど、愛用するエヴァのトートバッグから取り出した、乙女新党の"推し缶バッジ"を手で弄びながら、まだ考えに没頭している。

きゅっと目を瞑ったまま―――

と、次の瞬間。

美吹には、ちかのチャームポイントでもある、"笑顔になると見えなるくらい一直線に細くなる目"が、かすかに暗く光ったような気がした。

みんなもそれに気づいたのか、それとも気づいていないのか。

期待と不安の入り混じった眼差しで、ちかをジッと見つめている。

さっきまでの、ゆるみきった昼下がりの空気が、一変した。

するとここで、満を持して、ちかが口を開く。

ちか「えっと、どなたか、ハンカチか何か、持ってないですか? できれば濃い色で、厚手のものがいいんですけど…。なるべく透けないようなやつで」

これに、莉子。

さっと、フリフリのレースがついたピンク色の、いかにも彼女らしいハンカチを差し出す。

莉子「これで、いいですかね? はい、使ってください」

しかし、ちか、大げさに頭を抱え、首を振る。

ちか「センパイ! これ…ちょっと薄くないですか?」

ちかにとって、莉子は年上でありピチモ歴の上でも先輩であるが、こと、ゲームやアニメ、その他自分の趣味に関しては、一切の妥協を許さない。

あからさまに不満顔をすると、ハンカチを莉子につっかえす。

関根「え~っ(泣)」

莉子、ハンカチを受け取るや、ほっぺをふくらませて、すねるように。

あいかわらず、「最年長でも妹系」の本領発揮である。

と、ここで、ガタンとイスを鳴らしつつ、涼が立ち上がる。

涼「じゃあ、あれなんてどうかな? あそこにあるテーブルクロス」

フットワークの軽い涼が、パッと席を立って走り、部屋の隅のテーブルの上に、たたんでで重ねてあった、緑色の厚手のクロスを持って戻ってきた。

涼「はい」

ちかは、それを無言で受け取ると、テーブルに置いた、あやめのイラストが入った黄色の缶バッジに被せてみて、そして満足げにうなずく。

かねてから、「あやめ推し」を公言する、ちかは、あくまでも「黄色=田尻」の缶バッジにこだわる。

ちか「うんうん。だいじょうぶですね」

こうして、準備が整った。

遥「わぁ~!? 一体、どんなゲームが始まるん???」

好奇心の塊である遥が、待ちきれないといった感じで、目を真ん丸にしつつ、隣に座る莉子をひじでつっつき、小声で話しかけている。

モカ「静かにして下さい」

これにモカ、すかさず指を唇に当てて注意する。

どうにも頼りない先輩2人の「りこはるコンビ」である。

と、ここで、いくぶん芝居がかった口調で、ちかが語りだす。

ちか「えー。いいですか、みなさん」

一呼吸おき、たっぷりと時間をかけて、みんなを見回しつつ。

ちか「いまから、ボクが、この黄色と…あっ!」

ここで、少々あわててポケットを探る、ちか。

出てきたのは、リーダー仕様のピンクの缶バッジだった。高橋優里花は、事務所の後輩(荒川は年下ではあるが芸歴は圧倒的に長い)でもある。

気を取り直して。

ちか「いまから、ボクが、この黄色とピンク、それぞれの缶バッジを、みなさん1組ずつ配ります」

そう言うと、ちかは、エヴァトートから取り出した色とりどりの缶バッジから、黄色とピンクを選り抜い■て、カチャカチャと音をさせつつ、配り始めた。

みんなが順番に手を伸ばして、これを受け取る。

そして、全員に行き渡ると、再び、ちか。

ちか「えっと、メモ用紙っていうか、紙切れ、ないですかね? 小さいのでいいんだけど。小さいのを、できたらたくさん何枚も」

もはや、普段は、先輩はもちろん、同期や後輩に対しても基本敬語の「ですます調」で話す、ちかであるが、興奮
からか、すっかりタメ口になって。

モカ「へぇ~。なんに使うの?」

モカが尋ねる間に、涼は、部屋の隅に置いた自分のカバンを取りに走る。

涼「はい。ウチの使って」

サッと、「外見はクール、中身は乙女」を地で行く涼の私物である、可愛らしいノートを差し出す。

女優志望である涼が、自身の出演した作品の撮影につき、日々、細かく反省点を書き付けている『女優ノート』である。

ちか「これ、何枚か破ってもいいですか?」

言うや否や、ちかは、涼の許可の返事を待つまでもなく、すでにノートの後半部分、まだ記入されていない白いページを、手早く切り取り始めていた。

涼「・・・」

体育会系で、曲がったことが大嫌いな涼、いささかムッとしつつ、何か言い換えそうとしたとき。

≪バタン≫

ここで、扉が開いて。

結実「きみたち、何しとんねん?」

手に飲み物の入った紙コップを持ちつつ、愛莉鈴と結実が部屋に入ってきた。

2人は、ニコプチ同期&オーデ同期ということで、一緒に行動することも多い。

おまけに、「ゆいまりりん」として、今をときめく次期エース候補の"推されコンビ"でもある。

遥「あのね、あのね、ちかちゃんがね、ゲーム、やるんだよー♪」

うきうきと、遥が目をキラキラさせつつ得意げに説明する。

その間、愛莉鈴は、キャッキャと、はしゃぐ遥を、やんわりと無視しつつ、ちかの肩越しにテーブルを覗き込む。

愛莉鈴「なんかよくわかんないけど、面白そうですね」

普段クールな愛莉鈴にしては珍しく、この、乙女新党グッズを使ったゲームに興味を持ったようだ。

元さくら学院としてのプライド、ライバル心が刺激されたのかもしれない。

結実「ほな、うちら2人も入れてや」

すっかり乗り気になった2人を見て、ちか、ニヤッと微笑む。

ちか「ちょうどいいです。2人とも参加してください。このゲーム、やっぱり少人数だと、ちょっとなんて言ったらいいかな。―――うん、生々しいから。しかも、この6人だけだと、お互い良く知った同士だし」

さらに続けて。

ちか「ニコプチ出身で、ピチレになじみの薄い人たちが入ってくれると、少しは緩和されるかもです」

やや、とげのある言い方だ。

モカ「はい、決まりね」

とにかくこうして、2人をちかが招き入れたので、その場にいたみんなが席を詰めて、イスを2つ、テーブルの周りに付け足した。

2人、缶バッジも受け取り、準備完了。

しかし、ここでジーッっとこちらを見つめる熱い視線に気づく、ちか。

ちか「ん!? な…なに、この妙な視線は!?」

<ジーーーッ>

さっきから、すぐ隣のテーブルにひとりで座り、ずっと、一心に、ちかたちを見つめている女の子。

いかにも、入れて欲しそうなオーラを醸し出している。

ちか。視線の主を確認すると、1つ大きなため息をつく。

そして、その少女に向かって優しく語りかける。

ちか「はぁ。。。のあにゃんも入る?」

これに、すかさずパッと顔を輝かせて即答する乃愛。

乃愛「わーい♪」

こうして、乃愛もその輪に加わった。