#2 ゲーム開始

ちか「これで9人か。1人2問としても合計18コ。うんうん、けっこうあるな」

ちか、ひとり頷くと、説明を始める。

ちか「じゃ、これから、ボクがみんなに紙を2枚ずつ配ります。これに、各自、他人が普段どう思ってるか訊きたいこと、知りたいことを、質問形式で1枚につき1問ずつ書いてください。それも、誰もがイエス・ノーでハッキリと答えられる形で、です」

みんな、きょとんとした顔で、ちかの説明に聞き入っいている。

代表して、莉子が尋ねる。

莉子「えっとぉ。ぶっちゃけ心理ゲームみたいなものですかね?」

しかし、ちかは、直接それには答えず、鼻で小さく笑うだけで、そのまま流して。

ちか「さぁ。みなさん早く書いてください。で、書いたら紙を小さく畳んで、ボクによこしてね」

そう言うと、ちかはさっそく自分で書き始めたので、なんとなく、みんなもそれに習う。

こそこそと、手元を隠して、それぞれが真剣な面持ちで、紙に質問を書き込むと、あとは次々と小さく畳んで、ちかの方に押しやった。

やがて、全員の紙が、ちか手元に集まる。

ちか「はい、どうもです」

目の前に集まった紙切れを、くしゃくしゃと混ぜ合わせると、手元のコーヒーカップの受け皿の上に乗っける。

そして、結実に視線を移して。

ちか「じゃ、ゆいはん、頼みます」

結実は、突然自分が指名されたのでハッと顔を上げて、ちかを見る。

結実「へっ? うち?」

ちか「そう。あのね、ゆいはんには、これらの質問を順番に読んでもらいたいんです。ピチモ歴が長かったり、事務所が一緒だったりすると、どうしてもお互い、筆跡とかで誰が書いたか分かっちゃうじゃないですか。そうすると、気まずいっていうか、面白くないですから」

続けて。

ちか「その点、ゆいはんなら、この中では新ピチモだし、同じ事務所のコもいないし。まさに適任なんです」

この説明に結実、「ああ」と納得した顔をすると、ちかからみんなの紙の入った皿を受け取る。

ちか「さて、と」

ちかは改めてみんなを見回した。

美吹たちは、いささか緊張した顔で、ちかを見ている。

ちか「これから、ゆいはんに質問を読んでもらいます。そしたらみんな、その質問に、それぞれ正直にイエス・ノーで答える。もちろん口で言うんじゃない。ええ、これを使うんです」

そう言って、ちかは、手に、黄色とピンク、2つの缶バッジをつまみ上げ、高く掲げててみせた。

ちか「あやめがイエス。ゆりかがノー」

みんなが、ルールを飲み込むのを待つため、ここで多少の時間をおく。

その間を利用し、ちかは部屋の隅に置いてあった、撮影小道具として使われる、赤茶く錆びた金ダライを取って来た。

そして、席に戻ると、そのタライに、グリーンのテーブルクロスを掛けて、ふたをする。

ちか「自分の回答の缶バッジを握って、クロスの下からこの中に入れる。それで、みんなが入れ終わったら、カランカランとタライをゆすって、バッジを混ぜる。で、最後に、クロスを取ってみんなに公開。こういうルールです。いいですか? 分かりましたか?」

みんなが、ざわざわした。

莉子「なんか怖いですねー」

莉子が、ちょっぴり不安そうに、となりの遥へ、小声でささやく。

最年長とは名前だけ。年明けすぐの■ロケ、お化け屋敷で見せたとおり、中身は、小心者のヘタレなのである。

それに対し、遥は無言。自慢の透き通るような白い肌が、■やや上気してピンク色に染まっている。

一方、莉子の対面に座る愛莉鈴は腕組みをして、ちかを睨む。

愛莉鈴「けっこう、えげつないゲームですね」

ちか「フフフ。でも、まりりんちゃんだって、知りたいんじゃないですか? みんなが心の中で何を考えてるか。みんなから自分はどう思われてるか」

と、ここで美吹は、なとなくドキリとした。

心の中に抱えている秘密。自分だけの想い。誰にも言えない本心。

改めて美吹は、テーブルについているみんなの顔を、さりげなく見回した。

こうして、ピチモとして、仲間として、同じテーブルについていても、いったい心の底では、みんな何を考えているんだろう―――

「りこはる」だの、「モカりょう」だの、「ゆいまりりん」だのと、仲良しで括られていても、だからって、お互い、何を知っているというのだろう―――


涼「あっ! じゃあ、みんなが同じ答え出した時だけ、誰がどう答えたか分かるってことだ!」

涼が、いかにも「いいことに気づいたでしょ?」といった風に、どや顔で、ちかを見た。

ちか「そういうことです」

ちかは、さっと受け流す。

と、ここで遠慮がちに、莉子が割って入る。

莉子「でも、そうなると、きっと気まずいケースとかも、出てくるんじゃないですかね?」

心配と不安の入り混じった目だ。

これを受けて、ちか。

まっすぐに、莉子を見つめて。

ちか「あれ。センパイって、そんなキャラでしたっけ? ちょっと意外です。っていうか、抜けたいですか? 抜けますか?」

ちかの意外な挑発に、莉子。さすがに少々ムキになって。

莉子「抜けないもん! 最後までやるもん!」

これに、ちかは答えず、さっと視線を移して、美吹を見る。

全ては計算どおりのようだ。

ちか「さて、と。さっきからずっと黙ってる、いぶたんは、ちゃんと缶バッジ持ちました?」

美吹「あっ、はい」

さらに隣に視線を移して。

ちか 「のあにゃんは、ちゃんとルール理解した?」

乃愛「したよ~♪」

ちか「じゃ、はじめよっか。さ、ゆいはん、質問読んで」

ちかは、結実を促した。

結実は、先ほどのやり取りを思い、やや戸惑いを隠せない表情をしつつも、皿の上の紙切れを、適当に1枚手に取った。

結実「ええか? じゃ、読むで」

こうして、その恐怖のゲームは、今年も幕を開けたのだった。


(続く)